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実践編

基礎編


内容証明には返事は書くべき?


内容証明が届いたとして、返事を書くべきかどうか、という問題があります。
仮に法的義務が無いと思われるような要求であったとしても、返事をしないことで相手が感情的になり、不要な嫌がらせを受けるリスクもありますし、裁判などを起こされてしまえば、結果として勝訴できたとしても、過分の弁護士費用や時間・労力の負担を強いられることになります。
また、ストーカーや嫌がらせ、名誉毀損だと思われる事案の場合にも、放っておいたところで収束するどころか、益々エスカレートする危険というものも考える必要があります。
そのため、原則としては、どのような書面に対してでも、返事を書いた方が良いのは間違いありません。


ただ、気をつけたほうが良いのは、例えば相手方からの貸金請求について、仮に時効が完成していて、消滅時効の援用ができる状態であったのに、返済の猶予や分割弁済を求める回答書面を送ってしまったりすると、「時効の利益の放棄」となり、以後、時効の援用を行うことが出来なくなる、というような場合もあります。

返事について、内容証明によるかどうかは、証拠として残す必要性の有無などから判断した方が良いかと思います。


確認すべき事項

金銭の請求にかかる内容証明の場合
・時効になっていないか
例えばサラ金からの借金は5年、慰謝料は3年、飲み屋のツケは1年、などの期間の経過によって時効になります。
・取り消しの要素はないか
未成年の契約、特定商取引において法定書面の交付を受けていない、過失なく生じた損害の賠償請求、など。

消滅時効援用の内容証明の場合
・本当に時効になっているか?
個人間の貸金の時効は、最終弁済日ではなく、最終の返済予定日から10年です。
・相殺適状にある反対債権は無いか?
以前に逆に貸していたお金がすでに10年以上経過していたとしても、今回の借り入れ時点で時効になっていなければ相殺を援用することが出来ます。

契約の取り消しにかかる内容証明の場合
・取消権の要件は満たされているか?
有効に成立した契約は、正当な理由なく取り消すことが出来ません。
履行済みの贈与や追認行為がある場合などは、取り消すことが出来ません。
取り消しうることを知って一部履行を行った場合には、追認行為となります。
未成年が成人した後に履行をした場合も、追認行為となります。

債権譲渡の内容証明の場合
・譲渡禁止特約がついていないか?
契約書面に譲渡禁止の特約がある場合は、譲渡することが出来ません。
・性質上、譲渡出来ない債権
例えば、養育費や婚姻費用などの身分行為に関する債権は、譲渡することが出来ません。

相殺の内容証明の場合
・養育費や給与、慰謝料などの相殺禁止債権
民法や労働基準法その他の法令により、相殺が禁じられている債権があります。
例えば、養育費や婚姻費用などの扶養に関する債権は、相殺することが出来ません。
給与(賃金)に関しても、雇用主の側から、従業員に貸したお金や損害賠償請求債権と相殺することは禁じられています。
相手方から慰謝料を請求されている場合、請求されている側から、その相手方に貸している金銭などと相殺を援用することは出来ません。
ただし、慰謝料の請求権者から相殺を援用することは可能です。
・相殺しうる状態であるか
例えば、W不倫の場合の、不倫された者から、自己の配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求権というものは、そもそも当事者が異なるため、相殺することは出来ません。
また、支払期日などの期限の到来していない債権とは、相殺をすることが出来ません。

内容証明には返事を書いた方が良い場合

民法その他の法令により、回答しないことで、法的な効果が生じる場合があります。


遠隔地の事業者から契約の申し込みがあった時
遠方の事業者から契約の申し込みがあった場合に、返答せずに相当な期間が経過すると、その契約の申し込みはなかったことになります。
商取引において、申し込みを断るとき
売買などの一般的なについて、契約の申し込みを受けた時は、直ちに返答をしないと承諾したものとみなされます。
制限能力者が能力を回復した後に取り消したい契約の追認請求を受けたとき
未成年等の「制限能力者」が単独で行った行為は取り消すことができますが、未成年が成年に達した場合に、1ヶ月以上の期間を定めて、追認するかどうかの請求を受けた場合には、その期間内に返答をしないと、その行為を追認したものとみなされます。
無権代理の行為を追認して有効にしたいとき
代理権の無い者(無権代理人)が行った行為については、本人の追認がない限り無効となりますが、追認することで有効にすることも出来ます。
相手方は相当の期間を定めて、本人に無権代理人の行為を追認するか否かの返答を請求することができますが、期間内に返答をしないと、追認せずに無効として確定してしまいます。
選択債権の選択請求の通知を受けた時
どちらかを自由に選んで提供する権利(選択債権)は、相手方から、相当の期間を決めて選択を求められた場合、その期間内に返答をしないと、選択権が相手方に移ってしまします。
契約の解除ができる場合に回答を求められたとき
契約を解除できるのにしないでいる場合、相手方から相当の期間を設けて解除するか否かの回答を求められた場合には、その期間内に回答をしないと解除権が消滅し、契約の解除をすることが出来なくなります。
特定遺贈の場合で利害関係人より相続を受けるか否かの通知を受けたとき
相続人でない者が遺言で財産を受ける場合、遺贈義務者その他の利害関係人から相当の期間を設けて贈を承認するか放棄するかの回答を求められた場合には、その期間内に回答をしないと取消権が消滅し、遺贈を承認したものとみなされます。