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内容証明を出さない方がいい場合

内容証明は、手紙の一種ではありますが、将来的なトラブルの予防や裁判での証拠としての重要な意味を持ちますので、内容証明として出さない方が良い場合、というものがあります。

なお、ここでは、あくまで貸金や慰謝料などの金銭の請求にかかる内容証明の場合を想定しています。
よって、時効の援用や契約解除の場合は、少し意味が違う場合も含まれております。
ご了承下さい。


内容証明を出すことが得策でないと思われる場合

相手が事実を否認しており、何らの証拠も無い場合(金銭の請求)
すでに、「借りていない」「そんなことはしてない」等と、相手が事実そのものを否認していて、裏付ける証拠も無い場合、そのような状況のままで内容証明を出しても、相手が応じる可能性は、極めて低いと言わざるを得ません。

それどころか、かえって警戒され、都合の悪い事実や証拠を隠蔽・抹消するなど、裏目に出てしまうリスクさえありますし、逆に、「事実無根で恐喝行為である」などと反論を受けてしまうリスクさえありますので、ご注意下さい。

相手が任意に応じる可能性が無いと思われる場合(金銭の請求)
明らかに相手が任意に応じる可能性が無いと思われる場合も同様です。
例えば、医者に対する医療過誤の損害賠償請求などは、よほど明らかな場合を除き、カルテなどの証拠もないまま請求しても、応じてもらえる可能性は、ほとんどありません。
かえって警戒され、カルテを改ざんされる等のリスクすらあります。
最初から弁護士に依頼して、カルテの仮差押などの証拠保全手続きを優先すべきだろうと思われる事案が大半です。

親しい間柄で、友好な関係を継続したい場合
どのような文面内容で書くか、ということにもよりますが、やはり、親族や親しい友人・知人、会社の同僚、取引先、などの場合には、注意が必要です。
「内容証明を送られた」ということを以て関係が悪化してしまうことは、珍しくありません。
婚約者が結婚式の延期を求めたからといって、慌てて「婚約破棄の慰謝料請求」などを行ってしまえば、単にマリッジ・ブルーで不安になっていただけかも知れないのに、そのことが原因で破談になる、というような、目に見えて明らかな事柄も決して珍しい話ではありません。

相手方から確信的な詐欺を受けていたことを知った場合(金銭の請求)
例えば結婚詐欺など、相手が確信的に貴方を騙そうとしていたことを知ってしまったという場合、慌てて内容証明を出すできではありません。
詐欺というのは「暴行傷害」のような外形を伴わないため、極めて立証の困難な犯罪です。
いくら多額の金銭を渡していたとしても、相手に「本気で結婚する意思があった」等と言われてしまえば、罪に問える可能性は、ほとんどありません。
そのような場合も、まずは落ち着いて、相手が言い逃れを出来ない程度の証拠をきちんと押さえることが最優先です。

内容証明を出しても、効果が期待できない場合

相手が倒産して夜逃げしそうな場合(金銭の請求)
夜逃げをしそうだということを知った時点では、すでに時期に遅れて、どうにもならない場合は、多くあるかもしれません。
おそらくは、差し押さえることが出来るような資産も有していないことが大半だと思います。 このような場合には、直接、相手に会って、決して喧嘩せずに、親族の連絡先や引越し先などを聞き出すことの方が大事です。

相手が無資力で協力者がいない場合(金銭の請求)
相手方が、無職、生活保護受給者、服役中、などの無資力で、親族その他、協力する者がいない場合には、決して内容証明を出しても、何らの効果も期待はできません。
もちろん、この先将来のために誓約を一筆もらっておきたい、ということが目的であれば、良いとは思います。



補足

なお、多くのホームページや書籍で、「内容証明を出さない方が良い場合」として、以下のようなものが書かれておりますが、意味が違うかと思われますので、項目を記載した上で、補足説明をさせていただきます。

<A>誠意が見られるとき
⇒ 相手の感情を害して応じてもらいにくくなるから。

これは少し変な話です。
もちろん、支払うと言っている相手に「未だ支払いが無いから法的手続きを行う」などと書けば、相手が逆ギレして話がこじれるかもしれません。
ただ、それは、「内容証明郵便」の問題ではなく、どのようなことを書くかという、文面内容の問題なのです。
一方的に相手方を非難攻撃するような威圧的な文面ばかりが「内容証明」の活用方法では無いのですから、例えば、誠意があるようだが、どうも怪しい、等という場合、油断せずに、きちんと念押しをしておいた方が良い場合、ということは多くあります。
ご注意下さい。


<B>相手が証拠を持っていない場合
⇒ 相手に証拠を握られて不利になるから。

これは、一概に言えませんが、やはり変な話です。
例えば「私の夫と不倫したから慰謝料を支払え」等という内容証明が届いたとします。
相手が証拠を持っていない場合には、下手に回答して事実を認めてしまうと、相手の思う壺、という趣旨のようですが、少なくとも、内容証明を出した相手からすれば、返事が無ければ「無視された」「馬鹿にしている」と感情的に怒りを感じるでしょうから、その後の円満解決は不可能になる可能性が高くなると思います。
また、100%相手が証拠を持っていないという保証など、有り得ません。
会話の録音、メールの履歴、興信所による調査報告書、第三者の証言、防犯カメラの映像、他、どのような証拠があるかは、分からないのです。
どうぞ、充分にご注意下さい。




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